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混沌娘の週末日記 後編

まあ、グダグダです。
 オレが玄関へ着く頃にはアレの広がりは校庭を包もうとすらしていた。
「オイ! ここから出るな!」
 興味本位で野次馬をしてる、言うことを聞かない生徒へと町井が叫ぶ。それにはオレも入ってるんだろうが。
 町井というのは国語の教師のことだ。
 町井ら教師は出るなと言ってるが、どこにいたってアレに巻き込まれれば終わりだ。
 手にした黒い玉を見て、思わず乾いた笑いが漏れる。
「ハハ……こんな小さな玉に自分の命を任せるのかねぇ……」
 失敗すればやっぱりアレに飲み込まれてしまうんだろうな。
 ――アレじゃなクてこンとんダろ゛うが――
 片言にも達しないような日本語がノイズのように聞こえた。
 いや、聞こえたというより、頭に入ってきた感じだ。
「ん? 堀井か?」
 反応がない。
 ――ウン゛なんとかおとヲくみあわセてないとだけニいしをつたえられタ――
 と思えば数秒たって返事がきた。
 アレ……いや、混沌と言ったか。の中とはラグがあるのか?
「そうか。今行くぞ。待ってろ」
 うだうだとウルサイ教師の壁を颯爽とくぐりぬけ、玄関から脱出する。
 混沌がいろいろな物を吐き出し、飲み込みながらノロノロと進んでくる。
 思い切って手に持った小さな玉を印篭みたいにかざしながら走った。
 染みの中に溶け込んだ、……?
 何度か混沌を見てるが、こんな大きさのもので、さらに中に入ったのは初めてだ。
 ……玉を持つ手の辺りは空気を感じるが、体が全て混沌に巻き込まれて視界が、音がない。
 外はあれだけ荒唐無稽なのに中は全くの無だ。そして変な感じだ。
 何か、浮いてるのに沈んでるような、息もしてない気がするが苦しくないような……わかんねぇ。
 てか進んでるか? これ。
 ――それじャあだメだ。クチにくわえてみろ――
 堀井からのアドバイスが頭に飛んできた。
 口がどこかなんて当然見当もつかないが、いい加減に手を移動させてみる。
「おっ」
 やった、偶然口を見つけた。玉を口で挟む。やらしい意味はない。
 頭の周辺は玉のおかげで普通に戻ったようだ。
 ……いや……?
 ――かおが――
 顔……想像するのも嫌なんだが視界より上に鼻が見える気がする。……気のせいか口の位置も違うような。
 あとで元に戻るんだろうな……。
 しかし、いまだに足の感覚がなく、歩いてるのか立ってるのかもわからない。
 ――意志だ――
 今度は、はっきり聴こえた。
 意志? 意志で歩けるとでも言うのか。この世界では。
 なら……“堀井の元へ”
 すっ――
 感覚のない体が動いた気がした。
 次の瞬間には、暗黒の中に浮いた幻影のような、消えそうな堀井の姿があった。
 色が無いせいで間隔がつかめない。
 その堀井は口を大きくあけて眠ってるようにも見える。
「っほ……」
 危ない危ない、玉を落とすところだった。
 ――喋らなくとも、意志で伝わる――
 ……これで伝わってるのか?
 ――ああ――
 それより、急にしゃべり方が流暢になったな。
 ――さっき、日本語に位置する混沌言語が大体判ったからだ――
 ほぅ……それはともかく、これはどうやったらおさまるんだ?
 ――やっぱり知らないで来たのか――
 ……普通知らないだろ。一応この玉でなんとかなるのかと持ってきたが。
 ――恐らく、ならない。それがあっても混沌は動いていたからな――
 なんだよ、無駄足だったか……。
 ――しかしもし混沌が収束したらそれが必要……いや、待て――
 うん?
 ぶわっ!
 周りから黒が吹き飛び、色が現れた。
 な、なんだ?
 ――今流れて来た混沌言語を使ってみた。効果は――
「っん。これは……混沌を弾いてる?」
 口から玉を外しても、いくらか動いても、オレの体とその周りだけいつもの世界のようだった。
 ――そう。その混沌言語は、どうやら『北川騎士』という人物の秩序固定化効果があるようだ。こんなもの、偶然流れて来たとでも……――
 触ると顔も元に戻ってる。よかった。
「ところで混沌言語ってなんだ?」
 ――それはあとで説明するから、先に混沌をなんとかしなさい――
「なんとか、って……オレに出来ることなんか」
 ――さっきの言語効果で、ナイトは絶対的な秩序の塊になったはず。だからナイトが私の身体を秩序化して行けば収まると思う――
「言ってることがいまいちわからんが……」
 ――つまり、私を包むようにして混沌を収める感じに……――
「それって、要は抱きしめろってことだよな?」
 ――最終的には、そう、かも知れないけど――
「なに恥じらいでんだよ。そういう柄かって」
 ――仮にも女なんだよ――
「仮にも、ね。じゃあやってみっか」
 ばっ、と思いっきり腕を広げる。
 するとオレの腕の速度に追いつかない混沌が渦を巻く。
 そのまま堀井に近寄り、疑似映像みたいな姿を包み込んだ。
 それには意外にも感触があった。
「あっぅ、あ――」
 混沌を弾く範囲に入った途端、少しうめいて、透明に色を流し込んだように実体に戻っていった。
「大丈夫か、堀井」
 ――急激な秩序帰還で実際の身体としてまだ上手く動かない。下手すると意識も飛びそうだ――
「おいおい……気失われたらオレはどうすんだよ」
 堀井の口が開きっぱなしだ。オレが抱きかかえててもまだ混沌が放出され続けてるようだ。
 ――『玉』を――
 手にしてた玉を奥歯のあたりに挿す。体が動かないようだから、飲み込んだりしないように。
「……って、あれ? 玉、入ってないぞ」
 ――多分玄関辺りに落とした――
「玄関、人いっぱいいたからどこ行ったかわからないだろうな……」
 ――そうか。それより、まだ周りの混沌が収まらない。どうするか――
「オレが走り回ったら、この周りみたいに消えないか?」
 ――多分、私の感覚としては、混沌は水、ナイトはその中にあるラップに包まれた人形だと考えるのが妥当――
「水を受けつけない人形がいくら水を追いかけても水が消えるわけはない。か」
 ――一応さっきから、使えそうな言語を拾ってはいるが……――
「拾う、って」
 ――質問は後――
 言うより早く釘を打たれた。
 思考を読まれてるせいだろうか……。
「むぅ」
 ヴー、ヴー、ヴー……
「……ん?」
 ――え?――
 オレの携帯が、鳴った。
 ――ちょっと、ここ混沌の中よ? なんで携帯電話が繋がるのよ――
「そんなこと知るか。オレが秩序化だかしたからじゃないのか?」
 ――秩序化したのはナイトの周りだけのはずだから、普通に考えて混沌が電波を伝えるわけが……――
「堀野だ。出るぞ」
 堀井は腕の中でかすかにうなずいた。
「もしもし? どうした?」
『北川くん!? 大丈夫なの!?』
 オレがずいぶんと軽く電話に出たせいもあったのか、驚きを隠せない堀野。
「まぁ、なんとか大丈夫だ。堀井も生きてる。外は大丈夫か?」
『学校ギリギリまで混沌が迫ったけど、なんか止まったみたい』
「あぁ、オレが止めたからな」
『またまた』
 適当な冗談は堀野に通じなかった。
 冗談とはいえ半分くらいは本当だと思うが。
『それで、この残った混沌なんだけど……』
「そのことはオレら……というか堀井が考えてるん だ ・が

 ――――――――

「…………?」
 何か瞬間、凍った……というか、時間が止まった? そんな感覚がした。
「……ぁ大丈夫?」
 いつのまにか復活してた堀井の声でオレは我に返った。
「ああ……。お前、なんかしたか?」
「今混沌言語が溢れた。私の『門』からの混沌はほぼ収まったけど『門』から切れた混沌がしばらく秩序の中に存在してるから不安定になってる」
「……ん、そうか」
 急にベラベラしゃべり出して少し呆気にとられてしまった。
 気のせいか、しゃべり方もなんだかおかしい。
 言ってる意味は、堀井から出る混沌が収まったというくらいしかわからなかったが。
「大丈夫か?」
「……。大丈夫」
 堀井こそ不安定だ。
『もしもし、北川くん? まだ繋がってるよね……これ』
「あ、悪い堀……」
『オイ! 北川返事しろ!』
「うっせー、町井」
 町井に替わってた。
『あ、ごめん』
 今のをそんな堀野の軽い『ごめん』で片付けられるのもなんか腑に落ちない。
『えっと、弟さんが混沌収める道具持って来たんだけど』
 弟というのはオレのではなく堀井の弟だ。
「……おい、混沌を収める道具なんてあったのか?」
 腕の中、すぐそばで電話を聞いてる堀井に言った。
「そういえばそんな物もあった気がする」
「早く気づけば……」
『それ使うには危ないから混沌から出れないかな、って』
「これ、出られるよな? このまま歩けば」
「――多分」
「わかった、堀野。たぶん出られると思うから出るぞ」
『本当? なら、できれば携帯は切らないで出てきて』
「だそうだ。電話、持てるか?」
「え?」
「ほら。よいしょ」
 電話を堀井に押しつけ、その体を両腕で抱えた。
「いや、歩けるって」
「体が離れたらどうなるかわかんないだろ」
「……わかった」
 オレは大きな荷物を抱え、闇の中を歩き出した。

     *

 当然、方向感覚なぞ皆無だったので、混沌からは学校の端の方から出た。
 そして理帆に連絡をして混沌を処理してもらったのは、あれからすぐの事だった。
 端から出たのは幸いして、出来るだけ人目を避けて生徒群に戻れた。
 変な奴に見つかろうものなら大騒ぎ物だ。
 その後、軽い集会が行われ、校長が生徒達、さらには教師にまで口止めを促し、通常の授業に戻った。
 昼過ぎに早くも帰れるとはしゃいでいた生徒達には全く残念な報せだった。
 それは事情が事情なんだろう。一校長が判断出来る問題じゃなくなっていた。
 こうして一連の混沌騒ぎは、微かな噂の広まりと共に幕を閉じた。



 ~~~~~

 夕焼けが目に痛い程の朱く暗い教室。
 そこには三人の影だけが長々と伸びている。
「ホント、今日のはすごかったね。世界が終わるかと思っちゃった」
 理帆は、可愛らしい動物が沢山居る動物園にでも行った後のように話す。
 完全秩序化したナイトと、小さな小さな混沌から脱出し、その後、何も無かったと思う程混沌は消えて無くなった。
 この口の『玉』と一緒に貰った、通称秩序弾――混沌に着弾すると炸裂し、広範囲から混沌を無力化する小さく丸い弾。大きく混沌が漏れた時に、と用意されていた。
 その弾はひとつしか貰っていない。
 こう解説する私も、原理なぞ知るわけがない。もうひとつ作るなど無理な話だ。
 つまり、もう弾は無い。
 でも今度は――いや、なんでもない。
「で、結局混沌言語とかってなんなんだ?」
 私は、人の気配が無い事を確認してから言った。
「混沌言語ってのは私が勝手に付けた名前だけど、所謂『魔法を使う為の呪文』ってところね」
「え? それじゃあ混沌を操れるの?」
「ある程度。本当にある程度ね。
 それこそ宇宙で星を数える以上に気が遠くなる程、混沌言語は頭に流れて来る。その音にもならない言語とそれの意味とを掴んでは記憶していかなきゃならない」
「……お前、本当に人間なのか?」
 軽く苦笑しつつ言うナイト。
 私は軽口を交えて返す。
「いつも暇潰しで勉強してるから出来る芸当よ」
「ホリイちゃん、本当に頭いいもんね」
 人によっては嫌味に聞こえたかも知れないが、私には心地よかった。
「そう言われるのもなんだかなぁ……」
「“拾う”ってのはその星より多い呪文を拾うってことか」
「そう」
「それって、オレ達にも使えたりするのか?」
「物理的に……いや、精神的に? 無理。
 意志の塊のような『言語』を正しく作動させるのは私でも混沌が漏れてないと無理。
 そもそも混沌が無いと、いくら言語を唱えても発動しないと思うけどね」
「なぁんだ」
 でかい男が小さく拗ねても可愛げは無い。
「じゃあさ……――」
 私達は何事も無く、日が暮れるまでまた他愛も無い話を続ける事が出来た。
 彼らに次に会うのは月曜日だ。


--------------------

 一応あとがきというか言い訳
まず、確実に物書きに向いてませんね(何
語彙が無いし、大して考えずになりゆきで書いてしまうから、結末が変わってしまった。
なんの盛り上がりもなく終わったので次回(があれば)なんとかしたい。
何やら一部伏線のような処理してないものがあったりするが、それは本当に伏線だろうか?(

名前に関して。
どうしてもふつーーの名前がつけれないアレな病気なわけだが、出来るだけ普通に近づけようとはしてる(?
ホリホリと回文子がやりたくて堀井と堀野という区別が付きにくいものになってしまい。
小説は現実よりリアルなり。かぶるくらいがリアルだよ(でたらめ
騎士は無茶だったが気にしません。
タイトルに関して。
思いつかなかった。

結局、またすぐ混沌だとか言ってるけど(?)、所詮安直から出来たものなんで適当。
なんか言えば言うほど悲しくなってきたのでこの辺で。

ところでウェブ上での文章ってもっと改行多様するべきなの?
いつもなんだか真面目な感じで書いてるが・・・。
空行の意味が変わってくるからなあ。

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2007/12/08(土) 14:40:37|
  2. [創作]文
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最近ROやってる。

・ROキャラ
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